重慶から8.6平和アピール

中国重慶訪問団団長
作家   王 群生


 私は「被爆57周年再び戦争をくり返すな!8.6ヒロシマ大行動」実行委員会共同代表の栗原君子元国会議員、一瀬敬一郎弁護士及び吉田義久教授のお招きに応えて、広島に参りました。この度、平和を呼びかけ戦争に反対している多くの日本人民とともに「被爆57周年再び戦争をくり返すな!8.6ヒロシマ大行動」に参加する機会を与えてくださり、本当にありがとうございます。この厳粛な演壇において、重慶市民の「平和宣言」を発表することは平和を愛し、戦争に反対する市民の長年の願いでした。今日はようやくそれが実現しました。
 我々重慶市訪問団のメンバーは次の通りです。私は訪問団の団長で、作家、重慶大空爆の被害者、研究者です。訪問団の顧問の王孝詢氏は西南師範大学教授、重慶大空爆研究者です。訪問団の団員の高鍵文氏は重慶大空爆の被害者、六・五大隧道虐殺事件(較場口トンネル虐殺事件)の生存者です。訪問団の秘書は劉宗平氏です。我々は重慶市市民から侵略戦争への怒りと批判を、又重慶市市民から世界平和への熱望と期待を、さらに重慶市市民から日本人民、広島市民への友好希望と平和祝福を、一身に受けて、この地広島にやって参りました。
 さて、以下にご紹介致しますのは、栗原先生が「重慶市民へのメッセージ」の中で述べられた文章です。「私たちは、戦争への道をくり返してはならないと闘っています。広島市民は、57年前、原子爆弾によって多くの親、兄弟、友人を無くしました。幸いにして生き残った者たちは放射能にむしばまれ苦しい闘病生活を送っています。しかし、広島への原爆投下の前に、中国や朝鮮半島の人々をはじめアジアの民衆に対する加害の歴史があったことを反省せずにはいられません。アジア民衆2000万人もの人々を犠牲にする侵略戦争を止めることが出来なかった結果として、私たち日本人自身も300万人の兵士が殺され、原爆投下の犠牲を被ったのだと捉え返しております。日本国民は、この侵略戦争の反省に立って、二度と過ちはくり返さないと誓います。」
 我々も栗原先生の考えに心から同意します。日清戦争からの100年の歴史の間にに、軍国主義下の日本は、中国に何度も侵略し、中国の領土を蚕食しました。日本は、1931年の9・18事件から中国に侵略しはじめ、1937年の7・7事件に至って、ついに中国に全面戦争を開始しました。これに対抗するため、中国人民は総動員され、抗日戦争に参加しました。我々の都市の重慶市を例にあげますと、1938年の初めに国民政府が重慶に遷都した後、1938年2月から1943年8月までの6年間に、日本軍は、合計9000機あまりの戦闘機を出撃させ、空爆を行ったことによって、死傷者数は3万人余りにも上りました。1941年6月5日の六・五大隧道虐殺事件を例とすると、わずか一回で、死亡者人数は3千人近くになります。日本軍が重慶に行った空爆の目的は、我々民衆の抗日の意志を破壊し、国民政府を降伏させることにありました。この長期的な空爆はきわめて残虐なものでした。昼夜兼行で空爆したり、不意をついた襲撃をしたりしました。爆発弾、焼夷弾、毒ガス弾、細菌弾なども使用され、その規模、状況、もたらされた被害から見ると、重慶大爆撃は世界の空爆史において前例のないことです。これは、中国人民、重慶市民に対して、日本軍国主義が負った血の債務です。
 この度、私は「8.6ヒロシマ大行動」に参加するために、当時重慶大空爆の現場記録映画、写真集と歴史資料を持ってきました。同時に、今回来日した人の中でも私と高鍵文さんは、重慶大空爆を身をもって体験しています。私達は、この大災難の被害者、生存者であり、また日本軍国主義の侵略戦争の歴史証人でもあります。
 今年は中日国交回復30周年にあたります。そして「7・7事件」、日本軍国主義が行った全面侵略戦争65周年にもあたる年です。ここで、日本軍国主義が、当時中国、重慶に対して行った戦争加害行為を訴えるだけではなく、8月6日に、広島で、原子爆弾によって尊い命を奪われた無辜の魂の前に、深甚なる哀悼の意を申し上げます。
 加えて、我々は、日本人民、アジア人民、世界平和を愛する各国人民とともに、小泉首相の靖国神社の参拝に対し反対いたします。そして軍国主義の魂を呼び戻すために、教科書を改ざんし、侵略歴史を歪曲することに反対いたします。また、「有事法案」、「戦争法」の立法に反対いたします。日本人民を再び戦争の道に導こうとする陰謀を、決して達成させてはいけません。今日、私は「8.6ヒロシマ大行動」の厳粛な演壇において、日本人民及び世界人民に対し、重慶大空爆の歴史事実を訴え、また重慶市民、中国人民が世界平和を愛し、世界平和を熱望しているということを、宣言いたします。
「前事を忘れざるは後事の師なり」という諺があります。我々は、日本人民と共に闘い、宣言いたします。二度と戦争を行わず、中日人民の間に子々孫々に渡って友好関係を築いていきましょう。常に軍国主義の復活に対して警戒し、再び戦争の惨禍をくり返しては行けません。
 我々の美しい世界において、人民の友愛がどこにでもあふれ、友情の花が至る所に咲きみだれることを、心より願っております。